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相続税の計算方法

  • 文責:税理士 内堀昌樹
  • 最終更新日:2024年11月15日

1 相続税の計算は複雑

相続税の計算は、一般的に、以下のような流れで行います。

  1. ①遺産の価格を求める
  2. ②基礎控除額を計算する
  3. ③実際に課税される遺産の総額を求める
  4. ④相続人全員で納める相続税の総額を計算する
  5. ⑤相続人ごとの納付税額を計算する

こうしてみると、相続税が計算できるまでの過程が多く、難しそうに思われるかもしれません。

それぞれの段階ごとに詳しく解説していきます。

2 ①遺産の価格を求める

⑴ マイナスの財産の差し引き

まず、遺産の価額を計算します。

基本的に、遺産には、プラスの財産だけでなく、マイナスの財産も含まれます。

例えば、課税対象には、被相続人の預貯金や自宅のほか、死亡保険金や被相続人から生前に贈与された財産も一部含まれます。

相続税の対象となる財産については、こちらで詳しくまとめていますのでご覧ください。

また、被相続人が負っていた借金や未払税金などの債務や、葬儀費用などは、ここではマイナスの財産となるため、差し引きの対象となります。

⑵ 預金の評価

実際の遺産の評価は、遺産が普通預金のみの場合であれば、被相続人が亡くなった時点(相続開始時)での残高ということになり、簡単に行うことができます。

もっとも、遺産に定期預金がある場合、相続開始時の残高に加え、既経過利息を求める必要があります。

⑶ 土地の評価

また、遺産の中に土地がある場合は、その土地が倍率地域か否か、土地の形は整っているか、周辺状況はどうか、利用区分はどうなっているか等、様々な要素を考慮して、土地の価格を評価することになります。

土地の評価においては、小規模宅地等の特例を使うことで、評価額を大幅に下げることが可能になる場合があります。

参考リンク:国税庁・相続した事業の用や居住の用の宅地等の価額の特例(小規模宅地等の特例)

そのため、土地を評価する際は、特例が適用されるか考慮することも重要です。

3 ②基礎控除額を計算する

遺産の価額を求めることができたら、次は基礎控除額を計算します。

基礎控除額は、簡単にいうと、「被相続人の遺産のうち、相続税がかからない一定の基準額」のことです。

そのため、遺産の総額が基礎控除額を超えない場合には、相続税はかかりません。

基礎控除額は、「3000万円+(600万×法定相続人の数)」で計算します。

例えば、法定相続人が子ども2人の場合、基礎控除額は、4200万円となります。

この場合、被相続人の遺産が合計で4200万円以内であれば、相続税はかかりませんので、相続税の申告も不要です。

なお、ここでの法定相続人には、相続放棄をした人も含まれます。

そのため、先ほどの例で、子どものうちの1人が相続放棄をしたとしても、基礎控除額が減るわけではなく、4200万円のままです。

また、法定相続人のうち、養子がいる場合、実子がいるか否かによって、基礎控除額を計算するうえでの法定相続人の数が変わるため、注意が必要です。

4 ③実際に課税される遺産の総額を求める

実際に課税される遺産の総額については、遺産総額から基礎控除額を差し引いて計算します。

例えば、遺産総額が8000万円で、基礎控除額が4200万円の場合、実際に課税される遺産総額は、8000万円から4200万円を引いた、3800万円となります。

5 ④相続人全員で納める相続税の総額を計算する

実際に課税される遺産総額(課税遺産総額といいます)が計算できたら、次に、相続人全員で納める相続税の総額を計算します。

このとき、実際に遺産をどのように取得したかに関わらず、いったん法定相続分の割合で課税遺産総額を取得したものと仮定して、仮の税額を計算します。

各相続人の仮の税額については、一般的に、相続税の速算表を使って計算します。

参考リンク:国税庁・相続税の税率

例えば、この速算表では、法定相続分割合での課税遺産取得額が1000万円以下の場合、10%となり、3000万円以下の場合は、15%から50万円を控除した額となります。

各相続人の仮の税額が計算できたら、相続人全員の仮の税額を合算し、その金額が相続税の総額となります。

例えば、基礎控除額を差し引いた課税遺産総額が3800万円、相続人が子どもの2人の場合、仮の税額は、各235万となります。

この仮の税額の計算式では、法定相続分割合の取得額が3800万円÷2で各1900万円であり、1900万円×15%-50万となるため、仮の税額である235万円が算出されます。

したがって、この場合、相続人全員で納める相続税の総額は470万円となります。

6 ⑤相続人ごとの納付税額を計算する

相続税の総額が計算できたら、最後に、相続人ごとの納付税額を計算します。

この各相続人の税額は、個別の事情に応じ、さらに控除や加算が行われます。

⑴ 相続税が控除されるケース

例えば、相続税がさらに控除されるケースとして、相続人が配偶者である場合があります。

この場合、配偶者の税額軽減として、法定相続分額、または1億6000万円のいずれか高い額まで、相続税がかからないという制度があります。

参考リンク:国税庁・配偶者の税額の軽減

この制度は配偶者控除とも呼ばれています。

なお、この配偶者控除については、税額軽減を行った結果、相続税を納めなくてよいという結果になった場合でも、相続税の申告書を提出しなければなりませんので、注意が必要です。

また、配偶者控除の他にも、未成年者控除や障害者控除といった控除があります。

⑵ 相続税が加算されるケース

他方、相続人の税額が加算されるケースとして、遺産を取得した人が相続人以外の者であった場合や、配偶者と1親等の血族以外の相続人であったような場合があり、これらのケースでは税額が2割加算されることになります。

参考リンク:国税庁・相続税額の2割加算

なお、相続税の加算と控除の計算の順番としては、まず、税額の2割加算を行い、その後、各種控除を行っていきます。

このように、実際に納める納税額については、適切に控除や加算を行い、計算する必要があります。

7 相続税にお困りの場合は税理士へ

これまで見てきたとおり、適切に相続税を計算するためには、遺産の評価や基礎控除額の計算、相続税の総額の計算や実際の納税額の計算など、相続税に関する専門的な知識が必要になります。

相続税は、間違った数字で申告、納税してしまうと、結果的に余分に相続税を納めることになる場合や、税務調査の対象になる場合もあります。

反対に、本来納める税額よりも過剰に納めてしまっていても、その事実を知らされることはなく、自ら請求しなければ還付されることはありません。

また、税理士の中には、相続税の申告業務をほとんど行ったことがなく、誤った申告をしてしまう税理士もいます。

実際、誤った相続税の申告をしてしまい、相続人が余分に税金を納める羽目になったケースや、税務調査の対象になってしまったケースもあります。

そのため、相続税の申告にお困りの際は、相続税に精通した税理士にご相談されることをおすすめします。

なお、当法人では、相続税を集中的に扱う税理士が、原則として相談料無料でご相談をお受けしておりますので、お気軽にお問い合わせください。

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